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流言飛語 | 災害の芽を摘む – saigai.me

 流言飛語は『正確な知識や情報を得られず、明確な根拠も無いままに広まる噂のこと。俗説、風説、流説ともいう。』という説明文があります。

 いわゆる『デマ』はいつでも飛び交いますが、特に災害時など情報が少なく何かを信じて動こうという機運が高いときには、デマに乗ってしまう人が増えてしまいます。

 いたずらで流している人にとっては、騙される人が多くて楽しくて仕方ないと思いますが、騙された方はストレスが溜まります。騙された人によって影響を受けてしまった人もストレスになります。

 今回は、【注意喚起】という目的で流言飛語について検討してみたいと思います。

2020年3月1日




主戦場はネット

 10年前ならネット上の情報は信用しないというひとも多かったと思います。

 今では政府系もSNSの公式アカウントを持ち、ネットで情報提供しますので、信用性は高くなりました。

 そのネットが、危険でもあります。

 誰もが発信できるという点が何よりもデマを発生させやすい環境です。

2022年11月29日
2021年2月6日




流言・流説は人を壊す

 『根拠のないうわさ』とでも言ったらよいのでしょうか、噂話は昔からあります。

 この流言・流説により『村八分』に遭う人も居ます。
 居住地において、発言力のある住民が根も葉もないうわさ話を流したとき、その信憑性に関わらず地域住民が信じてしまう、信じたフリをしてしまうということがあります。

 筆者も地域の大地主にあらぬ噂をたてられて迷惑したことがあります。コロナ禍でテレワークが増えて家に居る機会が増えたところ『あの家は働きもせず住民を監視している』と近所に話しているところを見てしまいました。
 『住民を監視している』は嘘ですが『働きもせず』にリアリティがあると感じた人は監視の方も信じてしまう恐れがあります。

 村八分は非常に恐ろしいことです。
 何千万円もかけて家を建て、その地に住もうと覚悟して来たにも関わらず生活できないという残念なことが起こります。

 大分で発生した村八分はだいぶ時間をかけて争い、最後は賠償命令がでて明確に人権侵害を認めさせたようですが、農業をしている人にとっては簡単に引っ越せない事情があり、解決策を見出す必要があるのだと感じました。




誹謗中傷は絶対ダメ

 言わずもがなではありますが、誹謗中傷は絶対にしてはいけません。

 匿名で言いたい放題の掲示板などでは、言う側は盛り上がって楽しんでいると思いますが、反論したくても相手がわからない、のれんに腕押しという感じで、言われている方は死にたいほどにストレスフルな状態になります。

 これが有名人で、人前で仕事をする人にとっては、ネット上の誹謗中傷が拡散するスピードや範囲が桁違いですし、イメージを大事にする企業ではスポンサーを降りることもあります。

 事実に基づいていれば侮辱罪に当たらないのかもしれませんが、『根拠のないうわさ』であれば侮辱罪も適用されます。
 有罪か無罪かという前に、相手が嫌がるようなことをネット上で発信することに問題があると思います。

 木村花さんのニュースは法改正にもつながる事件となりましたが、彼女の生命は戻りません。




全体主義の時代ではない

 『マジョリティ』という言葉は、ときどき耳にすると思います。英語では『majority』と書きます。お察しの通り『major』はMajor League Baseball(メジャーリーグ野球)のメジャーです。

 マジョリティとは多数派を表す言葉です。

 マイノリティとは少数派を表す言葉です。

 先述の村八分にも通ずるところがありますが、マジョリティは多人数である必要はなく、発言力などで優位に立つ人が煽動すれば多数派(マジョリティ)を形成することができてしまいます。

 古い考え方に『全体主義』があります。
 個人の自由や社会集団の自律性を認めず、個人の権利や利益を国家全体の利害と一致するように統制を行う思想です。
 そもそも、どのような国家を健全と考えるか政治家や発言力のある国民が誘導するので、士農工商が正しいとすればその方向へ進みますし、戦争が正しいとすればその方向へ進みます。

 全体主義の危ういところは、国が決めた正しい国民を演じられない人を排除する人が出て来ることです。

 2022年には『プロパガンダ』という言葉もニュースで流れる日が続きましたが、全体主義に関連するワードです。

 関東大震災の頃に『五十円五十銭』(ごじゅうえんごじっせん)という言葉が一部の国民の間で広がりました。
 ある思想に一致する人たちが利用した言葉ですが、これを言えない人は不利益を被りました。
 『五十円五十銭』を言えない人に対して『井戸に毒を盛った』との流言飛語により『殺しても構わない』というとんでもない差別を生んだと言われています。




サイレントマジョリティ

 『silent majority』という文字を見ると無口で少数派という何かのマニアかなとも思えるような、ときにネガティブな意味もあるのではないか、と見せる言葉です。

 テレビに出て声高に自らの主張を論じるような人と対極にあるような、自分の意見を唱えるようなことをしない一般大衆をサイレントマジョリティと言ったりします。
 ここで『大衆』としているので、人数としての少数派ではなく議論の場には居ないのでマジョリティを形成する側に居ないということになります。

 『物言う株主』という人たちが新聞で取り上げられるのは、物言わぬ株主が多いため、目立つから報道にも乗る事になります。口出しはしないが株主ではあるという人の方が人数としては圧倒的に多いかもしれませんがマジョリティ(マイナー)側です。

 サイレントマジョリティは『声なき声』とされることもあります。最近話題の『被害者救済』は、被害実態が社会に知られたから救済法案が出されていると思いますが、声をあげても誰にも気づかれない声、最初から諦めている声が社会にはあります。

 先日、夕方のニュースで心臓移植のための渡米費用など5億円の募金をという話題が流されていましたが、この子1人のためにマスコミも動きます。5億円は個人では負担できる金額ではありません。
 一方、指が発達せず鉄棒を掴むことができないという子供の鉄棒用の義手は数十万円程度で入手可能ですが、これの募金を募ってもマスコミは乗ってきません。
 健常者と同じように鉄棒や跳び箱をしたいだけの小学生、普通の義手ではなく体育の時間に、ある競技のためだけの義手が欲しいというごく少数の子供が望むことが、叶えられません。
 極端に言うと全体主義的、手指は在るべきであって、無いのなら社会から外れて良しという空気を感じる人も居ます。当事者の方に言われて、なるほどと思いました。

 『声なき声』については、色々と考えさせられます。

 欅坂46の『サイレントマジョリティー』には作詞した秋元康さんの想いが込められているようです。




災害時の声

 災害時には声をあげても届かないことがあります。

 高度な情報社会においてネットが使えないということが、声をあげられないことにつながってしまうこともあります。
 いわゆる『情報保障』の世界に近いのですが、現代社会における普遍性について行っていない、あるいは災害によって手段を奪われた人々が情報発信の機会を失います。

 一生懸命に発信しても、誰にも気づかれないこともあります。

 例えば2018年7月に起きた西日本豪雨では、死者の半数が広島で発生しました。
 しかしながら報道のボリュームは岡山県倉敷市真備が圧倒的に多くなりました。
 まび記念病院での救出劇がワイドショーで報じられたことが大きな要因と思われますが、広島や愛媛の被害はあまり伝えられませんでした。
 母校も土砂が流入し1カ月の休校を余儀なくされましたが、災害ボランティアが来ることはなかったようです。真備では週末に1,000人単位のボランティアが集まったと言われ、地域間格差が生まれました。

 真備も広島も共に悪意も何もありません。共に被災地です。たまたまテレビやマスコミが集中的に報じたのが真備だったということになります。




災害時に抗う声

 災害時には、災害の専門家を自称する怪しい人が駆け付けることがあります。

 避難所では『もううんざり』『地域の人以外は入らないで』ということになってしまいます。

 閉鎖的になれば情報発信も行われないので、声なき声となってしまいます。

 他人の家に土足で踏み込むような災害専門家が2018年の西日本豪雨の頃に居ました。
 広島県の坂町では土砂災害があり、避難所暮らしの人が多く居ましたが、そこへ『○○県○○』と書かれたウェアを来た専門家を名乗る有名な学者が来たそうです。
 『生野菜が必要だ』と言って、トマトなどを持ち込んだところ、勇敢な役場職員が排除したそうです。
 その際のやり取りでは『生野菜が必要で、わざわざ持ってきたのだから食べるべきだ』との学者の主張に対し、役場職員は『食中毒の恐れがあるから困る』と突き返したそうです。
 実際、医療機関へのアクセスも悪くなっている状況、塵埃が舞い衛生状態も良くない環境下で生ものを食べると、食中毒のリスクが高まり、救急搬送できずに死亡する恐れもあります。町役場職員の対応は適切でした。

 マジョリティ側の人が強い発言力で生野菜を被災者に食べさせていたら、もしかすると集団食中毒が発生し、十分な治療を受けられなかった人が死亡していたかもしれません。
 のちにこの学者は『多少は食中毒を出したとしても、生野菜を食べる方が良い』『町役場の対応は間違えている』と公の場で役場職員を批判していました。
 マジョリティ側の悪い癖が顕わになった場面でした。町役場の人は抗議したい気持ちはあったそうですが、偉い先生が聴衆の前で堂々と発言しているところに、公務員が歯向かう訳にもいかないので、ここはサイレントマジョリティを甘受したそうです。




火事場の….

 正しい情報を持たない市民に対して、欺くような情報提供の方法で利益を得る人が存在します。

 新型コロナウイルス感染症の流行拡大では、まことしやかなことがささやかれ、様々な商品が浮かんでは消えました。

 良かれと思って勧めた人も居れば、儲かるからと耳障りの良い言葉を並べた人も居ます。

 医師法や薬事法(薬機法)などの法令に抵触すれば行政が規制をかけられますが、そうでない場面も多いので注意が必要です。

 『アルコール入り』と書いた上で『除菌効果がある』と書かれていると期待感を持って商品を購入する人が居ます。
 アルコールが入っている事実はあっても、適正濃度のアルコールで無ければ菌を殺すことはできません。
 除菌という言葉は、菌を取り除くことができれば良いと考えてしまえば、ティシュペーパーでも菌を除くことはできます。
 嘘は言っていませんが、菌を殺しながらすべてが取り除かれるというくらいに効果を期待してしまう人も居ると思います。

 そもそも新型コロナウイルスは菌ではなくウイルスなので、生物としてまったく違うものです。
 医薬品で言えば『抗菌剤』というものがありますが、抗菌剤は菌に対する有効性が明らかであっても、ウイルスには全く効かないかもしれません。
 菌交代症というものは、雑な言い方をするとウイルスの生きやすい環境をつくることです。ある空間に菌とウイルスが混在していて均衡を保っていたところに、菌だけ殺す薬をいれてウイルスしかいない状態にしてしまうと、ウイルスが爆発的に増えてしまうかもしれません。目的にあった薬剤を使う必要があります。

 災害対応も似た所があります。
 あっちが出ればこっちが引っ込む、全体のバランスを考える必要があります。




ダイハード3

 映画『ダイ・ハード3』では連邦準備銀行から白昼堂々と金塊を盗み出します。

 その伏線として、学校に爆弾を仕掛けたと脅迫し警察をニューヨークの学校へ分散させます。

 1446もある学校へ警察を分散させる目的で情報を流し、人々の関心をそちらへ集中させています。

 災害時に悪意のあるデマを流すとすれば、こうした犯罪と関係することもあるかもしれません。
 『○○工場で化学薬品が流出し、○○丁目あたりは封鎖』という情報が避難所に流れると、おそらくその地域には誰も近づこうとしないと思います。警察や消防が化学工場を確認している間に、誰も居ないエリアで盗みを働いてしまえば、かなりラクに仕事ができてしまうと思います。用意周到に、盗品をどこかに隠しておいて、災害がおさまったあとでゆっくりと持ち出せば怪しまれることもなく、稼ぐことができるかもしれません。

 日本の被災地でも空き巣泥棒のようなことは起きています。
 どこかのショップでは新品タイヤが大量に盗まれたと報道がありました。
 人が近づかないエリアでは窃盗しやすいと考えると、人を近づけさせないためのデマが流れる可能性があります。




注意喚起です

 このブログ記事は注意喚起を目的としています。

 揚げ足をとって、誹謗中傷することはおやめください。

 筆者は人間です。簡単に傷つきます。