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カンニングとセキュリティ | 災害の芽を摘む – saigai.me

カンニング

 昔のカンニングといえば『カンニングペーパー』だったように思います。

 私が大学在学中にも周囲ではカンニングが行われていました。
 落第したくないという想いからしていたようですが、真面目に勉強している者よりも高い点数を取る人があまりに多いと、平均以上の学力がある人が『平均以下』のレッテルを貼られてしまうので、それには問題があると思いました。
 学生が学生を注意してももめるだけですので、教員がとの程度まで見抜くのかというあたりが重要だなと当時は思いました。

 事前に試験問題を知ることでもカンニングができるため、もしかすると試験監督側が気づいていないうちにコンピューターをハッキングされていたり、金庫にある原本を盗み撮りされていることはあるかもしれません。




入試不正問題

 大学入試においてICTを使った不正が『発覚』しました。

 この日に何件の不正があったかわかりませんが、バレてしまったものがあったということで、氷山の一角なのか全件なのかはわかりません。

 問題点としては、試験問題がカメラで撮影されたこと、その撮影画像が送信されてしまったこと、送信相手がいたこと、何らかの回答受信方法を確立していたであろうことです。

【参考】産経新聞:試験問題7枚が流出か 一橋大留学生入試不正(2022年6月9日)

【参考】読売新聞:一橋大入試流出、「日本語」でも不正…中国人留学生2人を再逮捕(2022年6月29日)

【参考】Yahoo!:一橋大学の留学生入試流出 「日本語」の問題も流出か 2人再逮捕(2022年6月29日)




入試不正対策も性善説

 令和5年度の大学入試について、公平性を保つための不正行為防止策が公表されています。

 ざっと言えば『不正はしないでね』『不正すると良くない事があるよ』といった警告のようなもので、物理的に不正を防止するような論理性は無さそうです。

【参考】日本経済新聞:デジタル化、決め手欠く入試不正防止 実効性どう確保(2022年6月10日)

【参考】NHK:大学入試センター 新たな不正防止策を公表(2022年6月10日)

【参考】読売新聞:「一橋大の入試不正手伝って」家庭教師だった男に依頼…会場の巡回増やしたが気付けず(2022年6月9日)

【参考】朝日新聞:相次ぐ大学入試不正 共通テストはイヤホン禁止に 文科省も対策通知(2022年6月8日)

【参考】文部科学省:大学入学者選抜における不正行為に関する対応窓口について




文部科学省要項

 2022年6月の文科省通知によれば『公平性・公正性の確保』のために様々な方策を講じるよう周知されています。

 通知10ページの『第13 その他の注意事項』の『4 入学者選抜の公平性・公正性の確保』の『(3) 受験者の不正行為を防止するため,次のことに取り組むこと。』では以下のように示されています。

① 不正行為に該当する行為及び罰則について,事前に整理をし,その内容を募集要項等において周知すること。
 この他,各大学の判断により,例えば,不正行為については,警察に被害届を提出する場合があることを周知することも考えられること。

② 受験者の所持品について,入試方法や受験者数など,大学の実情に応じて,試験場に持ち込めないもの,試験時間中に使用できないもの又は身に付けることができないもの,大学が持ち込みや使用を禁止しているものを試験時間中に発見した場合の取扱い(不正行為として扱われる等)を募集要項等で明示しておくこと。
 また,試験時間中に使用することを認めていない通信機器の試験場への持ち込みを認める場合には,試験開始前に電源を切らせるとともに,大学の実情に応じて,例えば,鞄に収納させること等についても説明を行うこと。

③ 監督者が巡視を円滑に行うことができるよう,受験者の座席の配置など試験室の設定の工夫を行うとともに,試験時間中は,静謐な環境保持に十分に留意しながら,試験室内の巡視を適切に行うこと。その際,巡視時に注意を要する観点(例えば,手の位置,受験生の目線等)を踏まえ,監督者等に周知しておくこと。
 また,大学の実情に応じて必要な監督者や巡視を補助する人員を確保すること。

(3) 受験者の不正行為を防止するため,次のことに取り組むこと。

 上記の2番では『受験者の所持品』について示されました。以下の物が募集要項等で禁止されるものとして明示された場合、持ち込んだ時点で不正行為として扱われる場合があります。

  • 試験場に持ち込めないもの
  • 試験時間中に使用できないもの
  • 試験時間中に身に付けることができないもの
  • 大学が持ち込みや使用を禁止しているもの

 持込は許可されても試験中に使用を認められない『通信機器』などは『試験開始前に電源を切らせる』『鞄に収納させる』ことを説明することになっています。


 同通知の13ページ『第 14 新型コロナウイルス感染症対策に伴う試験期日及び試験実施上の配慮等』の『1 試験期日等』の『(6) ICTの活用等』では以下のように記されています。

 特に総合型選抜及び学校推薦型選抜においては,新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から,各大学の実情等に応じ,例えば,ICT を活用したオンラインによる個別面接やプレゼンテーション,大学の授業へのオンライン参加とレポートの作成,実技動画の提出,小論文等や入学後の学修計画書,大学入学希望理由書等の提出などを取り入れた選抜を行うなどの工夫に配慮する。
 また,文部科学大臣が高等学校の課程と同等の課程又は相当する課程を有するものとして認定又は指定した在外教育施設やその他外国の学校の生徒については,水際対策の影響により,容易に帰国できないことから,同様の工夫に配慮する。
 ICT の活用に当たっては,入学志願者による利用環境の差異や技術的な不具合の発生等によって,特定の入学志願者が不利益を被ることのないよう,例えば次のような配慮を行うとともに,受験者の不正行為を未然に防止するため,不正行為の内容及び罰則等について,募集要項に明記するなどの対応を行う。

① 通信環境の不具合が生じ,試験続行が困難になった場合,当日の時間を繰り下げ,又は予備日を設けて選抜を行う。
② 入学志願者が通信環境を整えることができない場合,大学でのオンライン受験も可能とする。
③ 大学にサポートデスクなどの連絡窓口を設け,不測の事態に個別に対応できるようにする。
④ ICT を活用して選抜を行う場合においても,障害等のある入学志願者に必要な合理的な配慮を行う。

(6) ICTの活用等

 この中で少し残念なのが『不正行為の内容及び罰則等について,募集要項に明記するなどの対応』という部分です。不正行為はいけないことだと大学入試する段階では知っていると思いますし、既に10ページでも罰則に触れているので、あまり強調しなくても良いかなと思いました。

【参考】文部科学省:令和5年度大学入学者選抜実施要項について(通知), 文部科学省高等教育局長, 4文科高第302号, 令和4年6月3日

【参考】文部科学省:大学入学者選抜について

【参考】文部科学省:入学者選抜実施要項

【参考】文部科学省:大学入学者選抜の公正確保等について




電源オフアプリ

 1990年頃の工業高校では『ポケコン』と呼ばれる小型のコンピューターが使われていました。

 微分積分や代数幾何などの授業よりもポケコン、原理となる計算式がわからなくても結果を得られるコンピューターの授業が優先されていました。実業高校なのでそんなものだと思います。

 授業でポケコンを使うので、期末試験にもポケコンを使うものがありました。機械工学の授業などは対象だったと思います。

 このとき、ポケコンをカンニングの温床にしないようにと『オールリセット』が行われます。
 ペン先を突っ込むようなリセットボタンという物理的ボタンを押すと画面には『リセットしますか?』的なものが表示され『Yes』と回答すればリセットが実施されます。

 この『リセットしますか?』のダミー画面と、Yボタンを押したあとの処理画面のダミーを作った男子が居ました。

 おそらくスマホでもこのような画面を作ることは難しくないと思います。
 ガラケー時代には難しかったと思いますが、スマホは簡単にアプリも作れる時代ですので、容易化されたと思います。

 試験監督がどのような方法でオフを確認するのかわかりませんが、全員の電源オフを同時に実施するのは困難だと思います。
 1人ずつ確認していくと、オフ確認後にこっそりと再起動されても気づきづらいと思います。




超小型端末の2台持ち

 試験監督に『スマホの電源を切らせるように』と言ってしまうと、勝手なバイアスで下図のような形をしたスマートフォンを想像してしまうかもしれません。


 しかしながらアップルウォッチのような小型デバイスも多くなり、IoT対応デバイスでは相当に小さなものでもネットに接続するようになっています。

 電源オフをパフォーマンス的に実施するために机にはiPhoneを置くが、あと何台かの携帯端末を隠し持っているということもあるので『受験番号12345はチェック済』と思っても、申告された1台だけをチェックしたにすぎません。

 数年内にはピアス型の携帯端末が出て来て、骨伝導などで音を伝えたり、カメラ機能付きコンタクトレンズで撮影できたりして入試不正の防止策はだんだんと減るのではないかと思います。




ジャマー (jammer)

 海外ではジャマーを利用することもあるようです。

 ジャマーとは電波妨害装置です。

 簡単に言うと、携帯電話と同じ周波数の妨害電波を飛ばして、携帯電話に電波を受信させないようにする装置です。

 ジャマー自体が発する電磁波が子供に影響するのではないかという懸念もあります。

 社会的な課題としては、試験会場内だけでなく広範に電波妨害してしまうことです。

 試験会場の窓ガラスが電波遮蔽されていれば、それを漏れて来る携帯電波だけを遮断すれば良いのでジャマーの出力は小さく、出力が小さいということは電波遮蔽ガラスは通りづらいので、試験会場内でほぼ仕事を終えることになります。

 ある程度の出力を持つ電波発生装置は電波法の規制を受けます。装置自体の認証が必要であったり、それを扱うための基地局としての免許が必要であったりします。

 基地局を設置し、無線技士などの有資格者を配置してジャマーを使うということが入試の実施において現実的ではないということが令和5年の入試時点の判断だと思います。

【参考】読売新聞:大学入試の不正防止、スマホ電波遮断や次年度の出願停止は見送り(2022年5月31日)

【参考】総務省:携帯電話等の通信抑止装置の使用について

【参考】総務省:携帯電話等の通信抑止装置(ジャマー等)について

【参考】PERFECT JAMMER: Mobile jammer is standard in the examination room

【参考】Diana Starovoytova Madara: Design and Testing of a Mobile-Phone-Jammer




船上試験

 携帯電話の電波は、通信事業者のアンテナから飛ばされる電波です。

 その電波が届かないところへ行ってしまえば、通信を使った不正は難しくなります。
 陸から数キロ離れれば携帯の電波は届かなくなると思います。届かないことが明らかな位置まで船を移動させ、船上で試験を実施すれば通信による不正は難しくなります。
 海上でも衛星電話は使えますが、相当に抑止効果はあると思います。

 とはいえ、船酔いする人も居ると思いますし、仮に5千人収容の船があったとしても、50万人が受験すれば100隻も用意しなければならないので、現実的ではありません。

 地下も電波が届かない場所ですが、地下専用のアンテナの敷設が進んでいるので、よくある地下街は電波切れはありません。
 この地下専用のアンテナをすべてオフにしてしまえば地下では通信困難となりますので、地下街を借り上げて地下で試験をすれば通信端末を用いた不正の可能性は減らすことができると思います。

 そこまでして試験を実施するとなると、もはや性悪説に立って受験生全員を疑わなければならないので、未来ある若者(若く無くても受験できますが)たちの心に傷をつけることになるかもしれません。




電波遮蔽袋に入れる

 不正行為が起こらなければ、不正行為によって不利益を被る人が居なくなります。

 不正行為で逮捕された人は自業自得ですが、不正がバレずに合格した人が居れば、その分だけ正当なことをして不合格になる人が居る訳です。

 低費用で出来る方法としては携帯端末を電波遮蔽袋に入れてもらって性善説の中でも少し疑ってみる、程度で良いのかもしれません。

 少しおおがかりな方法としては、試験会場を電波遮蔽袋に入れるというか、窓や壁に遮蔽シートを貼って防御してみるという方法があると思います。
 完全遮蔽は難しいですが、減衰はできると思います。




通信リクエストの可視化

 あとは通信事業者の協力を得ることでしょうか。
 試験会場から通信リクエストがあった場合に、その旨を可視化してもらい通信場所を特定するという方法は出来るのかもしれません。
 このあたりは法律での縛りが必要ですが、何らかの届出をした場合には『このあたりから通信リクエストがありました』ということを示す事で、それが表示されなければ『今回の試験で不正の可能性はありません』と言いやすくなると思います。

 大学入試には文部科学省も関係しますが、英検や国家試験など様々な試験がありますので、それぞれに届出することで可視化ができると良いなと思います。

 あとは費用負担の問題でしょう。




ホワイトハッカー

 ホワイトハッカーとは、ハッカーとしてサイバーセキュリティーの壁を破るスキルを持っていて、その知識と技術を善良な目的に使う人のことを言います。

 おそらく通信機器マニアの方々、警察や国家公安委員会の方々などは通信傍受や通信機器による不正に詳しいと思いますので、こうした方々による抜け穴の発見をしてはどうかなと思います。

 その方法を防ぐというよりは、そういう方法があるという事を知る事に意味があります。
 多少の応用をされても、不正に気付けることが重要です。




災害対応では図上演習

 災害対応のコンサルティングでは定番とも言える図上演習が試験監督にも必要だと思います。

 不正行為は通信機器を使った物ばかりではありませんが、試験監督が学生であった頃には考えられないような不正の方法がありますので、それを体験的に知る事は重要だと思います。

 また、コンビネーションによる不正も注意すべきです。

 ルールは守られるべきですが、守らない受験生が居ることもあります。
 試験会場でのマスク着用を拒んだ受験生がいたことでニュースになりましたが、同じような人を試験会場で見たことがあります。

 ルール違反する人を注意していると、試験監督の注意もそちらへ向いてしまいます。
 筆者が試験監督したある国家試験でも、何度注意してもカバンを置く位置を直さない受験生が居ました。現役新卒の20代ではない、おそらく社会人を経験した受験生だと思いますが、試験監督の言う事はきかず、皆を睨みつけていました。失格にすべきかと協議も行われましたが、こうした対応によって他の受験生への監視の目は減ってしまいます。

 こうした迷惑行為などが『わざと』であったとすると恐ろしいです。
 誰かのカンニングを成功させるために、誰かが犠牲になるということも考えられます。
 明らかに現役ではないとすると、この国家試験に人生を掛けていないかもしれなかったです。誰かに雇われて騒いでいたかもしれません。

 そういうケースも監督が経験しておかないと現場対応を誤る可能性がありますので、図上演習は必要かと思います。




カンニング防止は誰の防災?

 災害に関する際とですので、防災に関する話題に触れるのがこのページの仕事です。

 カンニングが発生し、それが発覚しないと不利益をこうむるのはだれかと言えば、真面目な受験生です。

 定員枠100人のところで101位の成績では落ちてしまいます。そのとき100位以内に不正者がいた場合、その不正を排除できていれば101位の人は100位になれたのです。

 この災いを回避するために、カンニング対策は重要です。